古典に学ぶ

道在爾而求諸逺 事在易而求諸難

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               『景德傳燈錄卷』第十

 

【 本文抜粋 】  

道在爾而求諸逺、

事在易而求諸難。

人人親其親、

長其長而天下平。

 

【 読み下し文 】 

道爾(ちか)きに在り、而(しか)るに諸(これ)を遠きに求む。
事易きに在り、而るに諸を難きに求む。
人人其の親を親とし、
其の長を長として、而るに天下平らかなり。

 

【 直訳 】 

人の道は、近くにあるのに、かえってこれを遠くに求めてしまう。

簡単な事であっても、かえってこれを難しく考えてしまう。

人ひとり一人が自分の両親を大切にし

目上の人や先祖を敬えば、自ずと天下は治まる。

 

【 現代語訳 】 

人の道は、身近な日常生活のうちにある。

それを忘れて、人はややもすれば

わざわざ高遠のところに道を求めようとする。(だから失する)

親を親愛し、年長者を尊敬すること

それが人の道なのだ。

『中国古典名言辞典』諸橋徹次 編著。

 

【 解 説 】

この言葉は、

『孟子』離婁章句上にあるものです。

孔子の学問の系譜は「曾子」へ伝わり

曾子の学問の系譜は孔子の孫「子思」へと伝わり

その子思の門人に教えを受けたのが「孟子」です。

 

孟子は

「いつくしみの心」と「人の歩むべき正義」の道を

強調して説いたことで知られています。

その道徳観は

四端説(したんせつ)と呼ばれるもので

人は、生まれながらにして

1)惻隠(そくいん:「あわれみ」の意)

2)羞悪(しゅうお:「はじらい」の意)

3)辞譲(じじょう:「譲り合い」の意)

4)是非(ぜ ひ:「善悪の判断」の意)

という4つを心の中に持っており

それを自覚して、自ら実践することにより

仁・義・礼・智という4つの徳が生じ

天下の泰平と人の安心が得られると説いています。

 

冒頭の言葉は

この四端説を基本にした「孟子の道徳観」から述べられたもので

今から約2300年前に、説かれた教えです。

この言葉を読んで

「今さら、何を当り前のことぬかしとんのや」

と思われた方もいるでしょう。

 

しかし

その当り前のことを

わたしたちは行っているでしょうか。

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歴史を振り返ると

時代が大きな変革期を迎えた際には

それまで「当り前」や「常識」とされていた

―― 道徳観 ――

が軽んじられます。

 

そして、その影響から

「人の道」として大切にされてきた様々なものを

無意識に、あるいは意識的に

ぞんざいに扱う傾向が人類にはあるようです。

 

こうしたありさまを

他人や時代のせいにするのは、容易いことでしょう。

 

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でも、それで良くなることは一つもなく

何も変わることはありません。

 

つねに親を大切にし、年長者や先祖をつねに敬う。

また自分も、子に大切にされる親になる努力を怠らず

他人に敬われるような年長者になるべく力を尽くす。

孟子が説くように

自分の心の中にある「四端」を自覚して

まず、わたし自身から

「人の道」をしっかりと歩きたいものです。

 

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