古典に学ぶ

子曰 必也正明乎

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               『論語』巻第七 子路第十三

 

【 本文・抜粋 】

子路曰、

衛君待子而為政、子將奚先、

子曰、

必也正明乎、

     

【 読み下し文 】 

子路曰わく、

衛(えい)の君、子を待ちて政を為(な)さば、

子將(まさ)に奚(なに)をか先にせん。

子曰わく、

必ずや名を正(ただ)さんか。

 

【 現代訳 】 

子路が言った。

「 衛の国の君子(殿様)が先生をお迎えして政治を任せることになれば、

先生は何から先になさいますか?」

孔子が言った。

「名を正す(名と実を一致させる)」

 

 

【 解 説 】

子路とは、

孔門十哲(孔子の十人の高弟)の一人のことで

姓は仲、名は由といいます。

この論語は、その子路が、

孔子に問うという形で展開されています。

 

背景にある衛の国は、

父子の争いで乱れており、

子路が質問したのは、その乱れている衛で

「孔子先生が、もしも政治を任されたら、始めに何をするのでしょうか」

ということ。

孔子は、その問いに対して

「必也正名乎」

 と簡明に答えました。

 

正名とは、

簡単にいうと「名と実を一致させる」こと。

 

つまり私(孔子)が、

もし衛の国の政治を任されたら、

言葉にして言い表した事(名目)と実際に行う事(実体)を

必ず一致させることから始めると言ったわけです。

乱れた社会に「秩序」を成立させるには、

この二つの一致が不可欠でしょう。

 

ところが、

論語・子路第十三の面白いのは、

この「必也正名乎」という孔子の言葉に対して、

子路が臆目もなく、次のように反論しているところです。

「これだから先生は世間知らずと言われるのですよ。

乱れた衛の国をまとめるために、始めに行うのが、

名を正すことなのですか……もっと手っ取り早い方法が何かあるでしょう」

子路は、このように孔子を小馬鹿にしたのです。

こうした若気の至り的発言は、

現代では若者に限らず、多くの老若男女が簡単に口にするようです。

柱影

この子路の反論に対し、

孔子は、人生の師として次のように諭します。

「 由、お前は相変わらず粗暴なヤツだな。いいか、君子は知らないことは黙っているものだ。

まず名と実が一致していないと、筋が通らない。

筋が通らないと、政局は安定しない。

政局が安定しないと、礼楽は興らない(盛んにならない)。

礼楽が興らないと、刑罰が公平ではなくなる。

刑罰が公平でないと、人民の心が不安になり、

一挙手一投足まで不安になって国が混乱する。

そこで名を正すことが大切になる。

つまり、必ず筋を通して言い(言葉で表し)、

言ったら、必ずその言葉の内容を実行しなければならない。

君子というものは、

自分の発言した言葉について、決していい加減にしないものだぞ」

 

孔子は、

人がリーダーとなり、他の人々を一つにまとめるには

①人格が立派な人、徳が高くて品位の備わった人は、

知らないことは黙っている。

②逆に何かを発言する際は、必ず筋を通して発言し、

発言した内容は 

必ず実行に移さなければならない。

以上の二つのポイントがあるということを教えたのです。

そして子路という存在を通して、

軽率な言動や行動を戒めなさいと述べているのでしょう。

 

最近は、

携帯電話やインターネットなどで、さまざまな情報が簡単に手に入り、

どんな物事に対しても、訳知り顔になる人が多くいます。 

しかし、そうした人のほうが、

知ったかぶりをしたり、軽率な言動や行動を取りがちで、

周囲に迷惑をかけていても気づかず、

「自分さえよければいい」

という勝手な生き方をしているようです。。

 

さまざまな情報に流されて

「必也正名乎」を忘れ、 

あなたも、いつの間にか、子路になっていませんか? 

 

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