ほとけの教え

霊は、祟る恐ろしいもの? それとも……。

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「霊」というと、あなたは何をイメージするでしょうか。

 

たとえばイギリス人は

「この世に出現する霊は、亡くなった権力者や偉人たちである」

と昔から言われているため

霊を恐れる人はいないそうです。

ですから大半の人は

「できれば出会いたい」

と、いつか霊に会えることを楽しみにしているそうです。

 

一方、日本人はどうでしょうか?

霊は……いつでも生きている人間に祟(たた)り……

社会や自然にまで様々な異変を生じさせる恐ろしいもの……であり

「できるならば出会いたくない」

と多くの人は思っているようです。

自分の先祖の霊も

場合によっては「祟る」として恐れ

そのために仏教や神道の儀式を通じて、亡くなった人の霊を供養をし

その祟りを鎮めるために「霊を祀る」

という歴史を日本人は歩いてきました。

 

しかし「祟る」という言葉は

そもそも(大昔は)

「神様がこの世にあらわれて、何らかの痕跡を残す」

という意味であり

木や石や鏡に「神様が出現すること」を言い表したそうです。

ところが、現人神として日本の権力者のトップに立った

「 天皇一族 」で内紛が起こり

そこで「死者」が出ると

関係する天皇の身辺に不幸が重なり、宮廷に異変が生じた。

奈良時代になると

そうした天皇一族の「不幸」や「異変」の原因は

亡くなった天皇や親王の「 怨霊による祟り 」ではないか

という流言が、世間に広がり

政治的にも社会的にも不安が拡大した。

 

「祟る」の意味は

このように奈良時代に変化したと言われています。

それから時を経ると

「祟る」ことで不幸や異変をもたらすのは

天皇一族の霊だけでなく

「 権力者の霊 」もそうであるとの流言が拡がり

ついには今日のように

「 一般の人々の霊 」も同様に不幸や異変をもたらす

と言われるようになったそうです。

 

では、奈良時代以前に生きていた

古代日本人は、霊についてどのように考えていたのでしょうか?

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古代日本人は

「 人は死ぬと、霊になって近くの山の頂上へ行き

先祖霊(神)となって子孫を守る 」

と考えていました。

 

つまり、霊は「祟る」どころか、

「神となって、私たちを守ってくれる存在」

と心から信じていたのです。

前述したように奈良時代からその意味が変化して

「祟る恐ろしいもの」

として伝えられるようになり

今日では、その流言のほうを信じている

人が多いというわけです。

 

一方、そうした「 祟る恐ろしいもの 」であっても

「 死者(先祖の霊)を供養したい 」

という気持ちを持ち続けている日本人は少なくありません。

 

どうして日本人は

科学が日進月歩する現代社会においても

「 霊を供養する 」という心を持ち続けているでしょうか。

 

それは祟りへの恐れというより、

日本人の心の中に古(いにしえ)から受け継がれている

「 日々私たちを守っていただいている 」

という 感謝の念があるからのように思います。

 

日本人は、

死んだ人のことを「ホトケ」といいますが、

これは、仏教が日本へ伝来してから

「仏教の悟りを開いた仏(如来や菩薩)」と

「先祖霊」を重ねてきた信心のあらわれであり

他の仏教を信仰する国々には存在しない

日本人ならではの言い方です。

 

この言葉からもわかるように、

日本人の「霊の供養」とは、本来は祟りを恐れて行うものではなく

「先祖に守られていること、救われていることを感謝する」

そのために「先祖の霊を拝む」というものなのです。

 

そのことは、たとえば

京都・北野天満宮の「今日の姿」を見るとよくわかります。

毎年受験シーズンになると

北野天満宮には、全国から様々な人が「願かけ」にやってきます。

ところが、この社(やしろ)はそもそも

「 菅原道真公の祟り 」を恐れて建てられたもの。

にもかかわらず、今日では

「 学問の神(祖先の霊) 」として道真公を参拝し

「 自分や家族や知人を見守っていただくこと 」

をお願いしているのです。

そして多くの人は、願いの結果に関係なく

後日再び社に訪れて

「 神様に見守っていただいたこと 」

を感謝の心をもって合掌し、その時の御礼の気持ちを静かに伝えます。

 

先人の霊に対して

こうした「 感謝の念 」で手を合わせる祈りこそ

時代を超えた日本人ならではの

「霊を拝む」という本来の姿ではないでしょうか。

 

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