ほとけの教え

〝絆〟のほんとうの意味を考える

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平成23年(西暦2011年)の一年間を表す漢字は

〝絆(きずな)〟でした。

未曾有の大災害、原発問題、世界的経済不況など

次々と現実に起こった難題により

未来に不安を感じ、

地域の絆、友人との絆、そして家族の絆を

「いま改めて大切にしたい」と望む

日本人が増えたことが、

その選考理由だといいます。

 

しかし、この〝絆〟の本当の意味を

あなたは知っていますか。

現代社会を生きる日本人の大半は

「家族の絆」

という言葉を日常生活の中でときおり耳にして、

その意味をなんとなく憶えただけでしょう。

 

実際に、漢字辞典(『新漢語林』)で調べると、

次のような意味が記されています。

①きずな(きづな)。ほだし。       .

ア)牛馬などの足をつなぐなわ。

イ)物をつなぎとめるもの 。   .

ウ)自由を束縛するもの。      .

②ほだ-す。つなぐ。つなぎとめる。 .

 

また「きずな」という読みで、同じ意味を持つ漢字は、

紲、緤、縻、靽、韁という5つがあり、

そのすべてが

…… 牛あるいは馬をつなぐ縄 ……

という意味を持っていました。

 

〝絆〟という漢字の意味は、

なぜ牛馬をつなぐ〝縄〟なのでしょうか。

 

想像してみると、

古から牛馬は、農耕においては大切な労働力であり、

干ばつによる飢餓などの緊急時には、

その肉も食べてきました。

つまり、農耕社会の日常において

牛・馬は、必要不可欠な存在だったのです。

 

そうした「断ち難いつながり」であったからこそ、

それを大切につなぎとめておく〝縄(ひも)〟には、

多くの漢字が残されているわけです。

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ところが、さらに漢字辞典をよく読んでみると、

「人と人とをつなぐもの」

という意味は、一切書かれていません。

実をいうと〝絆〟という漢字に、その意味が加わったのは、

日本でこの字が使われるようになってからのようです。


古語辞典で調べてみると、

一番目には「動物をつなぎとめるための綱」と記されていますが、

その次には、このように書されています。

「断ちがたいつながり。離れがたい愛情」

日常生活に欠かせない牛馬以上に、大切にすべきものは、

……人と人との愛情……

〝絆〟という漢字にそうした想いを込めたのは、

どうやら日本人のようです。

 

しかし急速な科学技術の発展により、

現代社会において牛馬は、

人がもっとも大切にする労働力ではなくなり、

それどころか、食肉用や競馬などに使う

〝モノ〟というのが常識となっています。

 

昨年多くの日本人が〝絆〟という字を強く思い浮かべたのは、

人と人との愛情やつながりの大切さに

改めて気づいたからでした。

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今年は、その絆を重んじる心を、さらに大きく広げ、

安易に〝モノ〟と考えているもの、当り前に思っている〝コト〟を

改めて見直し、その意味を日々考えてみてください。

 

ほんとうの〝絆〟、ほんとうの幸せとは、

そのように 

自分と縁のある

一つ一つの身近なモノゴトを

大切にする 〝心〟によってもたらされるものです。

 

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